ゴッホの《ひまわり》は何枚ある?7点と5点、二つの数え方

ゴッホがアルルで描いた花瓶の《ひまわり》は7点、現在知られる主要版は5点と説明される理由を整理。制作順、ゴーギャンの部屋、黄色の実験、複製版の違いを解説します。

Art4編集部読了 11分
フィンセント・ファン・ゴッホの絵画『ひまわり』
フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》、1888年、ロンドン・ナショナル・ギャラリー

ゴッホの《ひまわり》は何枚か。アルルで描いた花瓶の静物画をすべて数えると7点、現在比較できる大きな主要版を数えると5点です。さらに、パリ時代に描いた、地面に置いた切り花の絵は別の連作です。数字が揺れるのは誤りではなく、どの範囲を《ひまわり》と呼ぶかが違うためです。

結論:7点と5点は、数える範囲が違う

ゴッホのひまわりの数え方
答え数える対象含まれるもの
7点1888〜1889年にアルルで描いた、花瓶に挿したひまわりの静物画すべて初期の小画面、失われた作品、反復版を含む
5点現在各地に残る、12本または15本の大きな花瓶構図の主要版ロンドン、ミュンヘン、アムステルダム、フィラデルフィア、東京
さらに多数1887年パリの切り花、素描、書簡のスケッチ、版画的な複製まで含める「花瓶のアルル連作」とは分ける

ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、ゴッホが1888〜1889年のプロヴァンス滞在中に花瓶の《ひまわり》を7点描いたと説明しています。一方、同館の展覧会記録は、現在世界各地にある「5つの版」をロンドン、アムステルダム、東京、ミュンヘン、フィラデルフィアの作品として挙げています。

7点のうち、3本を描いた最初の小さな作品は個人蔵で、5本を描いた作品は第二次世界大戦中に日本で焼失しました。残る大きな12本・15本の構図が、一般に並べて紹介される5点です。

アルルで描かれた7点を、原作と反復版に分ける

ゴッホは1888年8月、南フランスのアルルでひまわりを描き始めました。手紙には、緑の花瓶に3輪、青い背景に3輪とつぼみ、黄色い花瓶に12輪とつぼみという制作中の三作のことを書き、さらに続けるつもりだと記しています。

夏の制作は、3本、5本、12本、15本と四つの構図へ進みました。翌1889年1月には、気に入った12本と15本の構図を基に三点を描き直しています。

現在残る主要なひまわり5点
所蔵地制作構図背景位置づけ
ミュンヘン1888年8月12本青緑の背景原作
ロンドン1888年8月15本黄の背景原作
東京1889年1月15本黄緑の背景ロンドン版に基づく反復
アムステルダム1889年1月15本黄の背景ロンドン版に基づく反復
フィラデルフィア1889年1月12本青緑の背景ミュンヘン版に基づく反復

反復版を含めると、同じ花束が複数あるように見えます。しかし背景色、花瓶の輪郭、花の位置、署名の色が異なり、一対一の機械的な複製ではありません。

ゴーギャンを迎える部屋に、ひまわりを飾る

ゴッホはアルルの「黄色い家」を、画家たちが共同で暮らし制作する拠点にしたいと考えていました。敬意を寄せるポール・ゴーギャンが来ることが決まり、その部屋を飾るために大きな《ひまわり》を制作しました。

1888年8月の手紙では、計画を「青と黄のシンフォニー」と表現し、日の出から制作したと書きました。切った花がすぐしおれるため、一気に描く必要があったとも述べています。

二点の《ひまわり》をゴーギャンの部屋に掛ける計画は歓迎の印であり、同時に、ゴッホが自分の代表作として見せたい絵を選ぶことでもありました。共同生活は同年12月に破綻しますが、作品の意味を後の悲劇だけに結びつけるべきではありません。制作したのは、期待と仕事への高揚が強い時期でした。

黄色だけで、花・花瓶・背景・光を分ける

ロンドン版では、背景、テーブル、花瓶、花の多くが黄色の範囲にあります。それでも一面が同じ色には見えません。

  • 背景:明るく平らな黄
  • テーブル:少し褐色を含む黄
  • 花瓶:輪郭の周囲で緑や橙へ変わる黄
  • 花弁:細い筆触で光を受ける黄
  • 花芯:黄緑、橙、褐色が集まる

色相の差を小さく抑えたまま、明暗、厚み、筆触の方向で物を分けています。ゴッホは花弁を一枚ずつ整然と写すのではなく、絵具を押し出す短い筆触で、開く花と枯れ始めた花を描き分けます。

描かれたひまわりは満開の花だけではありません。つぼみ、開花、種をつけた花、しおれた花が同じ花瓶に入り、時間の異なる段階が一画面にあります。「太陽と幸福の象徴」という説明だけでなく、花が変化する速さを描いた静物として見ます。

1889年の反復版は、単なるコピーではない

19世紀の画家が自作を反復することは珍しくありませんでした。ゴッホも、気に入った構図を家族や友人のために描き直し、対になる作品や装飾の組み合わせを考えました。

《ひまわり》の反復版では、花の輪郭、背景の色、絵具の厚みを調整しています。ナショナル・ギャラリーとファン・ゴッホ美術館が行ったX線・材料調査は、ロンドン版とアムステルダム版の制作手順と顔料の違いを比較しています。

完成画像が似ていても、下層、筆触、乾燥の順序は同じではありません。反復版は価値の低い複製ではなく、同じ構図を別の判断で作り直した原作です。

1887年パリの《ひまわり》は、花瓶の連作とは別に数える

アルルへ移る前、ゴッホはパリで、切ったひまわりを地面や卓上に置いた静物を描きました。花瓶に立つ黄色い花束ではなく、花の頭を近くから捉えた作品です。

ゴーギャンはこのパリのひまわりを評価し、作品交換も行いました。つまり、ゴッホとひまわりの関係は「ゴーギャンの部屋を飾るため突然始まった」のではありません。パリで花そのものを描く試みがあり、アルルで装飾的な花瓶の連作へ発展しました。

「ゴッホはひまわりを何枚描いたか」という質問に、パリ作品まで含めた総数で答える場合は、アルルの7点とは別の範囲だと明記する必要があります。

世界に残る5点を見分ける

  1. まず背景が青緑か黄色かを見る
  2. 花瓶の上にある花の大きな塊が、左右どちらへ傾くか比べる
  3. 青い輪郭線が花瓶とテーブルの境にどれほど残るか見る
  4. 署名「Vincent」の位置と色を確認する
  5. 花芯の茶色が広い花、種の緑が残る花を数える
  6. 原作と反復版で、同じ花がどの位置へ動いたか照らし合わせる

同じ構図を記憶と判断で組み直したゴッホの別の例は、《星月夜》の実景と想像をめぐる解説で読めます。《ひまわり》は縦長で、Macの横長画面を埋めると花瓶の上下が切れやすい作品です。全体を残す表示か、花の部分拡大として使うかを先に決めます。高解像度画像を所蔵館の公式ページから探す手順は美術館オープンアクセス実用ガイドで解説しています。

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